休養の日

リカバリー行動トレンド2025 選定会議【後編】

新しい休養の形を探る ~現代社会における"休養"の再定義~

コロナ禍を経て、私たちの生活は大きく様変わりしました。「どうやって休むのが一番いいの?」という素朴な疑問から、全国10万人の方々へ「リカバリー行動の調査2025」を実施しました。すると、「休養」の形が、従来の「ただ休んで疲れを取る」というイメージから、もっと積極的で多彩なものに変化していることが分かってきました。本調査では、7つの休養タイプ(休息・運動・栄養・親交・娯楽・造形想像・転換)から、現代人の休養行動を多角的に分析。特に健康意識の高い層で顕著な変化が見られ、新たな休養スタイルの萌芽が確認されています。そこで今回は、休養学で日本をリードする片野秀樹先生と、この大規模調査で見えてきた最新の休み方トレンドと、科学的に効果が実証されている上手な休養法について、2回に分けてじっくりとお話を伺っていきます。

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娯楽タイプの新展

―前回は休息、運動、栄養、親交の4つの視点からお話を伺いました。今回は残りの3つのタイプについて見ていきたいと思います。まず、娯楽面での大きな変化として「推し活」の台頭が目立ちますね。

片野先生:これは非常に興味深い現象です。従来の単なるファン活動とは異なる、新しい休養のスタイルとして確立されつつあります。

―データを見ると、推し活の実施率が前年比1.38倍と大きく伸び、特に健康意識の高い層では、ライブやコンサートへの参加が2.16倍になっています。

片野先生:この数字が示唆するのは、「推し活」が単なる趣味の領域を超えて、積極的な休養手段として認識されつつあるのではないかという点です。特に注目したいのは、オンラインとオフラインの両方のチャネルを活用している点です。これは現代的な休養の一つの形として、非常に示唆的ですね。

造形・想像タイプの深化

―造形・想像の分野では、創造的活動も増加傾向にありますね。博物館・美術館の利用(1.10倍)、DIY(1.19倍)が増加し、特に元気な人では、疲れている人よりも博物館等の利用(1.54倍)、DIY(1.74倍)と高い数値を示しています。

片野先生:重要なのは「ワーキングモード」から意識的に離れる時間を作ることです。これらの活動が単なる趣味の領域を超えて、意識的な「リトリート」として機能し始めているという点が重要です。日常から一時的に離れ、創造的な活動や意識的な休息を通じて心身をリフレッシュする。この「創造的リトリート」という概念は、これからの休養を考える上で重要なキーワードになるでしょう。

転換タイプの新潮流

―最後に転換タイプについて伺いたいと思います。「時間の質」を重視する傾向が強まっているようですね。家事代行サービスの利用(1.12倍)が増加し、特に健康意識の高い人では、そうでない層よりも11.51倍という驚きの数字が出ています。

片野先生:これは現代社会における「時間の再配分」という重要なトレンドを示していると思います。単に時間を節約するのではなく、より質の高い休養のために環境の整備のために時間を再配分する。この考え方は、これからの休養のあり方を考える上で非常に重要です。

―美容関連の活動も増加していますね。ヘアケア(1.48倍)、メイク直し(1.29倍)など。

片野先生:これらの活動は、単なる美容行為を超えて、自己変革や気分転換の手段として機能し始めています。特に健康意識の高い層でヘアケア(3.33倍)、エステ(6.64倍)と高い数値を示しているのは、美容ケアを通じた積極的な心身のリフレッシュが定着してきている証拠だと考えられます。

―本日は新しい休養のかたちについて、様々な視点からお話を伺うことができました。ありがとうございました。

片野先生:こちらこそ。休養の形は確実に変化しています。これからも様々な企業や研究機関と連携しながら、新しい休養のあり方を探っていきたいと思います。