休養の日

アミノ酸と休養の深い関係 ~味の素㈱が目指す”調子いいやつ”への道~

味の素株式会社
バイオ&ファインケミカル統括部 マネージャー
河内 未土氏

アミノ酸という言葉の認知度は約9割と高いものの、その具体的な働きや特徴についての理解はあまり進んでいないのが現状です。この現状に対し、味の素株式会社は「調子いいやつ!アミノ酸プロジェクト」を立ち上げ、女性たちの日常生活における悩みに寄り添いながら、アミノ酸の効果的な活用方法を提案。「なんとなく疲れている」という状態を改善し、コンディションを向上させるための啓発活動に取り組んでいます。

調子いいやつ!アミノ酸プロジェクト:https://amino-project.ajinomoto.co.jp/

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「休養」の新しい価値をアミノ酸で提供したい

―本日は「調子いいやつ!アミノ酸プロジェクト」について、詳しくお話を伺えればと思います。まず、このプロジェクトの立ち上げに至った背景をお聞かせください。

河内:このプロジェクトは、生活者の方々にアミノ酸を当たり前に使っていただける世界を目指して立ち上げました。きっかけは、日本リカバリー協会の調査で明らかになった「日本人の約9割が不調を抱えている」という衝撃的な結果でした。

アミノ酸と心身の調子には深い関係があります。私たち味の素㈱は創業以来100年以上にわたってアミノ酸研究を続けてきましたが、その価値が十分に理解されているとは言えない状況でした。そこで生活者の認知度向上を目指して、アミノ酸の可能性を広く伝えていく活動を始めることにしました。

―特に35歳から55歳の女性を対象として活動されていますが、その理由を教えていただけますか?

河内:元々担当していたアスリート向けのスポーツサプリメントである「アミノバイタル®」事業のより広い層へのアプローチを考えていく中で、日ごろ運動をしない方に対してもアミノ酸が役に立てるのではと考えるようになりました。

この年代の女性は、まさに人生のターニングポイントともいえる時期にいます。キャリアが本格的に動き出す一方で、育児や介護など家庭でマルチタスクな生活を送り、さらに自身の健康面での変化も経験する世代です。特に睡眠の質の低下や慢性的な疲労感、ホルモンバランスの変化による不調など、様々な課題を抱えています。

私自身もラクロス選手として活動していたこともあり、アスリートの方々がアミノ酸摂取でコンディションを改善される様子を幾度となく見てきました。その経験から、一般の方々、特に多忙な現代女性にこそ、アミノ酸の力を活用していただきたいと考えています。

アミノ酸の体への働き

―アミノ酸について、基本的な働きを教えていただけますか。

河内:アミノ酸は体の20%を構成するタンパク質の基本単位です。人体のタンパク質の材料となっているのは20種類のアミノ酸で、そのうち9種類は体内で作ることができない「必須アミノ酸」として知られています。

―アミノ酸がタンパク質の構成物質なのも、あまり知られていないですね。

河内:そうかもしれませんね。特にお伝えしたい、注目すべき特徴が三つあります。一つ目は、アミノ酸が体内で毎日入れ替わっているという点です。つまり、継続的な摂取が必要不可欠なのです。

二つ目は、アミノ酸が単にタンパク質の材料としてだけでなく、エネルギー源や神経伝達物質の原料としても働くということです。そして三つ目は、水分不足のように明確な警告サインがないため、不足に気づきにくいという特徴です。

―アミノ酸について、しっかりと習ったことがありませんでした。そこで、具体的にアミノ酸をとると、どのような課題が解決できるのでしょうか。

河内:まず、アミノ酸は疲れにくいからだやコンディションづくりの土台となるものだということを知って頂きたいです。そのうえで、いくつかのアミノ酸には特定の働きを持つものもあります。例えば、「グリシン」というアミノ酸を摂ると、睡眠の質が向上することが報告されています。また、「ヒスチジン」というアミノ酸には疲労感を軽減する働きがあるという研究成果もあります。

―お聞きすると、リカバリーの視点では非常に有効ですね。ちなみにアミノ酸は通常の食事の摂取では足りないのでしょうか。

河内:通常の食事をしていれば摂取量は問題ないはずです。ですが、忙しい現代の人は食事を抜いたり、カロリーなどを気にして食事量を制限したりすることで、アミノ酸に限らず必要な栄養素をバランスよく摂れていないこともあるでしょう。

―とすると、サプリメントなどの補助食が重要になるということですね。

河内:ただし、私たちは単にサプリメントを提案するだけでなく、食事からの摂取方法や、生活習慣の改善など、トータルでのアプローチを心がけています。その人の生活スタイルに合った「アミノ酸との付き合い方」を提案することで、持続可能な健康管理をサポートしていきたいと考えています。

アミノ酸で解決したい日本人の疲労問題

―日本人の疲労と休養の関係について、どのようにお考えですか?

河内:日本では「お疲れ様」という言葉があるように、疲労を表現することが文化的に根付いています。しかし女性は家庭内での仕事が多いにも関わらず、その疲労を表に出すことに、躊躇する傾向があります。男性は外で働いて疲れるのは当然という認識がある一方、家事や育児による疲労は「見えない労働」として軽視されがちです。

―女性特有の課題について、もう少し詳しくお聞かせください。

河内:女性に多く見られる課題として、「見えない労働」があります。例えば、家事や育児は数値化しにくい労働であり、その疲労度が適切に評価されにくい。また、ホルモンバランスの変化による体調の波も、周囲から理解されにくい問題の一つです。

さらに、働く女性の場合、仕事と家庭の「二重負担」を抱えているケースが多く、その結果として十分な休養が取れていない実態があります。帰宅後も家事や育児が待っているため、仕事の疲れを引きずったまま就寝することになり、質の良い睡眠が取れないという悪循環に陥りやすいのです。

―この状況を改善するために、どのようなアプローチを考えていらっしゃいますか。

河内:まず重要なのは、「休養」を後回しにしない意識づくりです。具体的な改善策として、限られた時間の中で効率的に回復力を高める方法を実践してほしいと考えています。例えば、就寝前のアミノ酸摂取による睡眠の質の向上や、短時間でも効果的なリラックス方法の提案などです。

―アミノ酸について、休養の一つとして伝えていきたいですね。

河内:はい。私たちは「休養」の新しい価値を、アミノ酸を通して提案していきたいと考えています。特に女性の方々の「見えない不調」に寄り添いながら、より良いコンディション作りをサポートしていきたいと思います。

アミノ酸に関する正しい知識と活用法を知ることで、より多くの方々が自身の健康管理に主体的に取り組めるような環境づくりを目指しています。そのために、わかりやすい情報発信や、具体的な実践方法の提案を続けていく予定です。

【プロフィール】

河内 未土氏

味の素株式会社 バイオ&ファインケミカル統括部 マネージャー。2004年入社。大阪での営業を経て、マーケットクリエイター、ドラッグストア専任営業、スポーツニュートリション部(アミノバイタル事業部)を経験。現在は健康学術チームでアミノ酸普及啓発プロジェクトを担当。

調子いいやつ!アミノ酸プロジェクト:https://amino-project.ajinomoto.co.jp/