活動報告

妊活期のための休養学

妊活期のための休養学
〜心とからだを「妊娠に向き合える状態」に整える60分〜
ダイヤビルレディースクリニック セミナー実施レポート

2026年3月19日、ダイヤビルレディースクリニックにて、不妊治療中の女性に向けたセミナー「妊活期のための休養学」が開催されました。本セミナーでは、妊活中に感じる「なんとなくつらい」という状態を、“疲労”という視点から捉え直し、心と身体を整える新しいアプローチが共有されました。講師は、一般社団法人日本リカバリー協会 主席研究員の春木完堂。これまでスポーツ・ビジネス・産前産後領域で培ってきた休養学の知見をもとに、「がんばるだけでなく、整えることも妊活の一部である」という重要なメッセージが伝えられました。

妊活期に起こる「見えにくい疲労」とは

妊活期は、一見すると健康的な生活を送っているように見える一方で、実は非常に疲労が蓄積しやすい状態にあります。食事や運動、生活リズムの改善、体温管理、情報収集など、日常のあらゆる行動が「妊娠のため」に最適化されていく中で、常に気を張り続ける生活構造が生まれます。さらに、治療スケジュールや結果への期待・不安が重なることで、心身は慢性的な緊張状態に置かれます。
特に印象的だったのは、「妊活ぐるぐる」と呼ばれる状態の説明です。これは、ホルモン変動や治療スケジュールに伴い、期待と落胆が繰り返され、心と身体が休まるタイミングを見失ってしまう状態を指します。「結果が数値化されにくい不確実性」、「自分の意思とは無関係に起こる身体の変化」、「「休んでいいのか」が判断できない状況」こうした要素が重なり、「終わりの見えないループ」として疲労を増幅させていきます。

なぜ「休んでも疲れが取れない」のか

セミナーでは、「休んでいるのに疲れが取れない理由」についても詳しく解説されました。その大きな要因が、「脳は休んでいない」という状態です。身体は休んでいても、常に「次の治療」「結果」「今後の選択」を考え続けてしまうことで、脳は活動を止められません。この状態では、自律神経が交感神経優位(常にスイッチON)となり、回復に必要な副交感神経への切り替えが起こりにくくなります。
その結果として、「回復スイッチが入らない」、「血流調整がうまくいかない」、「ホルモンの反応性が低下する」、といった状態が引き起こされます。つまり、「しっかり治療を受けているのにうまくいかない」と感じる背景には、身体の受け取る力が低下している可能性があるのです。ここで提示されたのが、「妊娠成立には2つの輪が必要」という考え方です。ひとつは医療による外側からのアプローチ、もうひとつは身体がそれを受け取る内側のコンディション。この両輪が揃ってはじめて、治療の効果が十分に発揮されるという視点です。

「整える」という新しい妊活の視点

本セミナーの核となるテーマが、「整える」という考え方です。妊活においては、どうしても「頑張る」「改善する」「最適化する」といった行動が中心になります。しかし、それだけでは心身は消耗し続けてしまいます。そこで重要になるのが、「回復できる状態をつくる」という視点です。
そのための具体的なフレームとして紹介されたのが、「休養の7タイプ」です。

休養とは単に寝ることではなく、これらをバランスよく取り入れることで、心身を回復させる総合的な行為です。また、実践的な方法として以下のようなポイントも紹介されました。「入眠直後の90分を大切にする」、「入浴を活用して深部体温を調整する」、「短時間の仮眠で日中のリセットを行う」、「夫婦で生活リズムを共有する」。特に強調されたのは、「一人で頑張らないこと」。妊活は個人の問題ではなく、夫婦で取り組むプロジェクトであり、生活環境そのものを“二人で整える”ことが重要だと語られました。

「あなたのせいではない」というメッセージ

セミナーの最後に伝えられたのは、「あなたの性格のせいではない」という言葉でした。妊活中に感じる不安や焦り、自己否定感は、決して個人の弱さではなく、構造的に起こりやすい生理的な疲労状態の結果です。「期待と不安の繰り返し」、「通院による緊張」、「コントロールできない身体の変化」。こうした状況の中で、「つらい」と感じるのは自然なことです。だからこそ必要なのは、「もっと頑張ること」ではなく、「回復できる状態を整えること」。この視点の転換こそが、これからの妊活において重要な鍵となります。本セミナーは、医療の効果を最大化するための“身体側の準備”という新しい視点を提示し、多くの参加者にとって大きな気づきの機会となりました。

おわりに

妊活は、結果だけでなく、その過程における心身の状態も非常に重要です。「頑張ること」と同じくらい、「整えること」に目を向けること。それは、治療のためだけでなく、自分自身を守るための選択でもあります。日本リカバリー協会では、今後もこうした“休養学”の視点を通じて、妊活期・産前産後を含めた多くの方の支援を続けていきます。