休養の日

『疲労学』への展開と今後の展望

『疲労学』への展開と今後の展望
~東洋経済新報社×片野先生 特別対談~

19万部を超えるベストセラーとなった『休養学』に続き、待望の新刊『疲労学』が刊行されました。「疲れの正体を知りたい」という読者からの熱い要望に応え、およそ8カ月の企画期間を経て生まれた一冊です。当初、"疲労"という言葉のネガティブなイメージに片野先生は戸惑いを見せたといいます。しかし、「疲労を前向きに捉え直す」という新しい視点で、より実践的なアプローチを目指すことに。深い紺色の『休養学』に対し、エンジ色の表紙が印象的な『疲労学』は、書店では「青本・赤本」として親しまれています。

《前編》を読む

『疲労学』誕生の経緯

―『休養学』の成功を受けて、続編の企画はすぐに始まったのでしょうか?

高橋(編集者):実は『休養学』の発売直後から、読者から"疲労について詳しく知りたい"という声を多くいただいていました。特に若い世代から"疲れの正体を知りたい"という要望が強かったんです。ただ、すぐには動き出さず、まずは『休養学』の反響をしっかり分析することに時間を使いました。

―その分析からどのような気づきがありましたか?

高橋:読者の反響を調べると、"休養の重要性は分かったが、具体的にどう実践すればいいのか"という声が目立ちました。また、書店員さんからも"疲労対策の本を求めるお客様が増えている"という情報が入ってきていて。そこで、より実践的なアプローチで疲労に焦点を当てた本の企画が浮上したんです。

―『疲労学』というタイトルに決まった経緯を教えていただけますか?

高橋:社内では比較的早い段階で『疲労学』というタイトルが候補に挙がりました。ただ、片野先生は最初、少し難色を示されて。『新・休養学』や『続・休養学』という案も検討したんですが、新しい読者層の開拓という営業からの強い要望もあり、最終的に『疲労学』に決まりました。

片野先生:正直、最初は戸惑いがありました。"疲労"という言葉にネガティブなイメージがあったからです。でも、高橋さんから"疲労を前向きに捉え直す本にしよう"という提案があって。疲労を敵視するのではなく、上手くコントロールするという考え方に共感できました。

中田(担当):タイトルが決まった後は、表紙デザインの検討に入りました。当初は深緑色を検討していたんですが、『休養学』との区別を明確にするため、最後の最後でエンジ色に変更しました。書店では"青本・赤本"と呼んでもらえるよう意識しています。

―企画から刊行までのスケジュールはどのようでしたか?

高橋:企画会議から刊行まで、およそ8カ月かかりました。『休養学』以上に視覚的な説明を重視したかったので、イラストや図表の作成には特に時間をかけました。また、具体的な方法を一つでも多く掲載できるように心がけました。

―『疲労学』ならではの工夫点はありますか?

片野先生:『休養学』で好評だったドリル(実践方法)のページを増やし、より実践的な内容にしました。また、疲労の種類や原因を細かく分類し、読者が自分の状態を把握しやすいよう工夫しています。

『休養学』との違いと編集方針

―『休養学』と『疲労学』では、どのような違いを意識されましたか?

片野先生:『休養学』では"休養は寝ることではない"という固定観念を正し、攻めの休養で活力を上げることを提案しました。一方『疲労学』では、疲労状態をいかに行動や意識でコントロールできるか、活力の低下を抑制する方法に焦点を当てています。

高橋:編集面では、『疲労学』の方がより実践的な内容を意識しました。片野先生もおっしゃったように、具体的なドリル(実践方法)を増やし、イラストも多用して、読者がすぐに実践できるよう工夫しています。

―読者層の設定は変えられたのでしょうか?

高橋:対象読者は変えていません。ただし、まだ『休養学』を知らない人にも手に取ってもらえるよう意識しました。『疲労学』から入って『休養学』に興味を持っていただくケースも想定しています。両方読んでいただければ理想的ですが、どちらから読み始めても問題ないよう設計しています。

(撮影:尾形文繁)

休養学の実践と効果

―編集者お二人は、実際に休養法を実践されているそうですね?

高橋:私は換気を意識するようになりました。コロナ禍で強制的に換気する習慣がついたんですが、実際にリフレッシュ効果を実感しています。あとは、片野先生と長山さん(『休養学』のライター)が愛犬家なので、私も動物動画を見て癒されています(笑)。

中田:シャワーだけで済ませていた入浴を、ミルキングアクション(血流促進)を意識して湯船にゆっくり浸かるようになりました。また、在宅勤務中に煮詰まった時は、スマートフォンでラジオ体操の音源を流して体を動かすようにしています。

今後の展望

―今後の展開についてお聞かせください。

中田:まずは『休養学』『疲労学』の2冊を同時に展開していきたいですね。書店での青本・赤本の同時展開や、メディアでの同時露出など、相乗効果を狙っていきたいと考えています。そして、目指せ!第3弾(笑)。まずは累計50万部を目指し、いずれは100万部突破のベストセラーにすることが夢ですね。

―9月8日が「休養の日」とのことですが、何か連携は考えていらっしゃいますか?

中田:東洋経済オンラインで本の紹介記事を掲載したり、SNSでの情報発信をいたしました。休養の大切さを社会に広めていく活動に、私たちも協力させていただければと思います。

片野先生:休養について真剣に向き合う機会として、この『休養の日』を活用していきたいですね。書籍を通じて、より多くの方に適切な休養の重要性を伝えていければと思います。

高橋:休養や疲労の問題は、現代社会においてますます重要性を増しています。私たちも引き続き、この分野の啓発に貢献していきたいと考えています。

―本日は『休養学』のヒットの秘訣を、様々な視点からお話を伺うことができました。ありがとうございました。

―前編を読む―

【プロフィール】

高橋 由里
早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。