休養士の活動紹介 No.010

休養士

山野 宏章先生

産業保健の現場で活きる「休養学」

大学での研究や講義に加え、疲労を専門に産業保健分野で労働者支援を行う休養士の山野宏章先生。資格取得以前から休養の重要性は感じていたものの、休養学基礎の教科書に初めて触れたときには、自身の実感がエビデンスをもとに体系化されており、腑に落ちる感覚があったといいます。

もともと理学療法士として、腰痛や転倒災害といった身体の不調を中心に現場支援に携わってきました。そこで感じていたのは、「症状が出てからでは遅い」という課題だったといいます。企業の現場では、痛みとして現れる前の段階で多くの人が疲労を抱えており、「みんなへとへとなんです」「疲れが抜けない」といった声も多く、身体の問題の背景には、メンタル面も含めた疲労の蓄積があると実感していたそうです。こうした状況から、「もっと上流から解決したい」という思いが強まり、休養学に出会います。

休養学で広がった視点と現場での変化

休養学を取り入れたことで、これまでの専門性に新たな視点が加わりました。痛みへの対応にとどまらず、「なぜ疲労が蓄積するのか」「どうすれば回復できるのか」といった仕組みまで説明できるようになり、現場での反応にも変化が生まれたといいます。もともと「体調を整えるには体を動かすことが重要」と考えていましたが、休養学に触れたことで捉え方にも広がりが生まれ、多様な休養があることを実感するようになりました。また、近年は人とつながりすぎることによる疲れの増加を感じているといいます。オフを意識することや、仕事量・働き方にゆらぎを持たせることが重要だと考えています。

現在は大学での研究・講義に加え、企業での現場巡視や作業環境の確認を行いながらアドバイスを提供しています。騒音や作業負荷といった課題に対しては、環境改善に加え、休養の取り入れ方まで含めて支援。自律神経や疲労のメカニズムを踏まえた説明が理解を深めています。セミナーは企業の労働者を中心に、スポーツに取り組む子どもや高校生にも行っています。

日常の実践とこれから目指す社会

日常では、こまめに休憩を取り、同じ作業を続けないよう心がけています。腰への負担を和らげるために立ったままPC作業を行うほか、子どもを抱っこしてぼーっと過ごす時間や、古民家のリノベーションに取り組む時間も大切にしています。こうした工夫は、「休養の7タイプ」を無理なく実践している状態ともいえます。その結果、大きく体調を崩すことは少なくなったといいます。

今後は「休養ができて当たり前の状態」を広げていきたいと考えています。自分のことを後回しにしがちな人が多い中で、自分自身を整えることの大切さを伝えていく。それは、仕事や目標を達成するためにこそ休養を取り入れるという考え方です。アスリートにとって休むことは自然な選択ですが、一般の労働者は休養を先送りにしがちです。しかし、仕事から逃れることが休養ではなく、オフばかりを重ねればよいわけでもありません。働くことと休むことを切り離さず、バランスよく取り入れる。その積み重ねによって、疲労と休養を無理なく調整できる人を増やしていくことを目指しています。

山野先生の休養セミナーは今後も開催予定です。講師のご依頼については、協会ホームページよりお問い合わせください。


講師プロフィール

山野 宏章

(やまの ひろあき)

宝塚医療大学 保健医療学部 理学療法学科 講師
理学療法士、認定理学療法士(運動器)、健康経営アドバイザー、休養士

働く人の健康とパフォーマンス向上を支える研究・実践に取り組む。変形性膝関節症や腰痛の予防をテーマに、動作分析と運動指導の研究・実践に従事。自律神経や痛み、疲労を専門とし、産業保健分野でワークエンゲージメント向上やバーンアウト、プレゼンティーズムの予防・改善を支援している。

INFO

お問合せはリカバリー協会まで
URL:https://www.recovery.or.jp/recontact/